「野球のポジションで、レフトは左翼、ファーストは一塁と呼ぶのに、なぜショートは“遊撃手”と変った呼びかたをするのですか?」
質問者:「松井イチローさん/12歳」

もともと、ショートは二人いたんだ。短い塁間を守るから、「ショートストップ(略してショート)」という名がついたんだ。

◆ショートは二人いた!?


 まず、「遊撃手」とは翻訳された言葉だよね。だから、遊撃手と訳すもとになった「ショート」というポジションが、なぜ「ショート」と呼ばれるのかを考えてみよう。
 もともと、ベースボールの世界で、ショートは2人いたんだ。1・2塁間に一人、2・3塁間に一人という具合に、2人。他の内野陣はというと、1塁手は1塁ベースの上、2塁手は2塁ベースの上、3塁手は3塁ベースの上というように、それぞれのベースに足をつけて守っていた。つまり、内野手はあわせて5人もいたわけで、その中で2人の「ショート」は、1・2塁間や2・3塁間を結ぶ線よりも前で(投手の斜め後ろあたりで)守備につき、バッターの打った打球を短い距離のうちに処理したところから「ショートストップ」、略して「ショート」と呼ばれていたんだ。
 それが、後になって、アメリカで1・2・3塁手が、ベースを離れて守るようになった。その場合、内野に5人は多すぎるということで、1・2塁間のショートストップがいなくなってしまい、2・3塁間のショートストップだけが残ったんだ。
 その時点で、2・3塁手より1塁から一番遠いところを守る内野手になったので「ショートストップ」ではなく「ロングストップ」となるところだけど、名前は「ショート」とそのまま残ったわけだ。
 さて、ショートを翻訳した「遊撃手」という言葉だ。よく、「一定の場所に所属しないで動くこと」を「遊」の字を使って「遊軍」とか「遊兵」と表現するね。ショートも塁には属さない、自由に動く選手だ。だから、「遊撃手」と翻訳したんだよ。

◆役割が変わってもポジション名は変わらない

 ちなみに、ロングストップのはずなのに、ショートと名前が変らなかったように、野球には、役割が変わっても名前がそのままのポジションがあるよ。
 「ピッチャー」がそうなんだ。ピッチャーとは「ピッチする人」のこと。ピッチ(Pitch)は、もともとは「(バッターが打ちやすいように)下からポイと投げる」という意味であり、実際にかつてのピッチャーは打ちやすい球を投げていた。ところが今、ピッチャーの役目は打ちにくい球を投げて、打者を抑えることだね。それでも、名前は変わっていないんだよ。

 古代エジプトを起源に持ち、イギリスからアメリカへ渡り、「ベースボール」としてルールが整えられた野球。ショートの変遷にも見られるように、ベースボールが今の形になったのは、面白くしようと何度もルールが変えられた結果だということがわかるね。

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