「JリーグのプロモーションキャラクターのMr.ピッチはなぜ芝生をモチーフにしてるのですか?」
質問者:「スーパーサブさん/12歳」

日本中のスポーツ施設(校庭やグラウンド)に天然芝の普及を訴えるため、Mr.ピッチは全身芝生。

◆スポーツは芝生の上で遊ぶもの


 全身天然芝で覆われたJリーグのキャラクター「Mr.ピッチ」。Mr.ピッチの「ピッチ」とは、サッカーで言うフィールドのこと。なぜ、芝生をモチーフにしているのかというと、日本サッカー協会もJリーグも、日本のスポーツ施設における天然芝生の普及に力を入れているからなんだ。
 1991年にJリーグが誕生した際、Jリーグは「Jリーグ百年講想」という方針を発表した。そのなかに「日本中にひとつでも多くの芝生で覆われた広場やスポーツ施設ができること」を目標としてかかげた。
 老若男女を問わず、誰もが体を動かすことのできる環境を作っていこうという考えの基本に、芝生の施設がある。そもそも、ボールゲームを始めとしてあらゆるスポーツというのは、芝生の上でやるものなんだ。どんなに転んでもけがをしない、砂や土では、擦り傷や打ち傷等のケガの危険性も高いし、ホコリもたって、体も泥で汚れる。とくに雨の日などは最悪だ。けど、芝生ではそんな心配もないし、緑色は見た目にも気持ちがいい。そんなスポーツに最適な芝生は、欧米では当たり前。けれど、日本ではほとんどが砂や土のグラウンドだね。以前、横浜F・マリノス監督岡田武史とドイツのハンブルグにある日本人学校(小中学校)を訪ねたことがあったけど、そこの校庭は全面芝生。当時コンサドーレ札幌の監督だった彼は「うちの練習場よりいいな」とつぶやいたんだ。それほど、日本と欧米の芝生環境の格差は激しいんだ。

◆芝生でプレイするのを嫌った?明治期の日本

 欧米ではスポーツ施設には芝生のフィールドが常識。なのに日本では、砂や土のグラウンドばかり。都心部の小学校では、土のグラウンドではほこりが立つからと、校庭をアスファルトに変えたところまである。そんな「固い地面」では、危なくて思い切りスポーツを楽しめない。
 スポーツをするには芝生がいいはずなのに、なぜ日本には芝生が普及しなかったのだろうか? これは私の推測だけれど、スポーツが入ってきた当時の日本に原因があると思うんだ。
 欧米から日本へ、サッカーやテニスなどのスポーツが入ってきたのは明治8年から11年にかけてのこと。スポーツを初めとする西洋の文化は、最初、大学で受け入れられたんだけど、そのときは、当然「グラウンド=芝生」という考えが入ってきたはずなんだ。けど、芝とか草というのは、草野球・草相撲・草競馬といった言葉があることからもわかるように、「庶民の文化」というイメージが強い。芝居は、どこにでも生えている芝の上で観るから「芝居」だし、草相撲や野球だって、「何も整備されてないところで素人が行うもの」というイメージだ。(※ちなみに、役者や力士が通る道を、草が生えているだけでは殺風景ということで、花を飾るようになった。それが「花道」の言葉のもとになったんだ)
 当時の大学というのは、ほんの一部の高級なエリート(貴族や官僚の子弟)だけが入学できるものだった。そのエリートたちが、素人や庶民と同じように、芝・草の上でスポーツをするには具合が悪いということで、芝生を嫌ったのではないかと思うんだ。そのかわりに、転んだら擦り傷まで負ってしまう土を使用することで、「ケガなど恐れず、エリートらしく厳しい精神鍛錬にも耐える」というような精神主義を、スポーツに持ち込んでしまったように思える。
スポーツというのは、本当は誰もが自由に遊んで楽しむものなのにね。

◆国や自治体も芝生普及に尽力を


 「日本中のスポーツ施設に芝生を」というMr.ピッチのキャンペーンは、まだ始まったばかり。だけど、全国でも少しずつだが校庭を芝生に変えていく運動がスタートしている。
 神戸では、震災後、芝生普及団体が活動している。京都のある小学校では、校庭を芝生に変えた途端、不登校の生徒がいなくなったというんだ。昼休み、教室に残って遊ぶ生徒が減り、みんな芝生のしきつめられた校庭で遊ぶようになったともいわれている。これらは、芝生の大きな効果だよね。
 あとは、国や地方自治体が芝生に対する考えをもって欲しいということ。不況だ不況だと騒ぐのなら、校庭やグラウンドの芝生化を公共事業として行うのも手段かもしれない。
 また、芝生と言えば、メンテナンスにお金がかかるという話が聞かれるけれど、それはゴルフ場のイメージがあるからに過ぎない。雑草があってもかまわない。いや、雑草と呼ばずに野草といって、芝生と同種の草と考えればいい。スポーツを行う場所としては、土や砂よりは、よっぽどいい。そういう考えで、草のフィールドが増えれば、子供のころから思い切ったプレイ(ケガを恐れないプレイ)もできるようになり、一流選手の育成にもいいはずだ。

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