| 質問者:「野球さん/12歳」 |
| ◆ 90フィートにまつわる偶然のお話 最初に「どうして4つのベースはひし形におくか」に関してだけど、4つのベースは正方形に置かれているよね。観客側から見るとそう見えるかもしれないけれど、正方形だよ。 ちなみに、その正方形の塁間は、90フィート(27.43m)と決められているね。それには不思議な話があるんだ。 きちんとしたルールが整う以前のベースボールは、マサチューセッツ州とニューヨーク州で大流行し、マサチューセッツ州のボストンでは「ボストンコモン」という市民の憩いの場所といえる大きな広場で、ベースボールが楽しまれた。 その公園には一面の芝生があり、そのなかに、芝生のない土の遊歩道があった。それが四角形になっていて、その角に板や布袋を置いてベースにしたという。 そのベースとベースの間が、偶然90フィートだったというんだ。ベースボールのルールは、21点を先に取ったほうのチームが勝ったり、三振はなかったり、いまのフォアボールが昔はナインボール(9個のボールで一塁に進む)だったり、ピッチャーはソフトボールのように下手から投げていたのが上手から投げるようになったり、ピッチャーとバッターの距離が何度も変わったり……といった具合に、いろんなことが何度も作り変えられてきたけれど、たったひとつ変わっていないルールが、この90フィートという塁間なんだ。 たまたま遊歩道の距離が約90フィートだったのに、それが公式ルールとなる。しかも、その90フィートの塁間で、昔も今も、どれだけ技術や用具が進歩しても、手に汗握るクロスプレーが繰り返されてきたというのは、不思議なことだよね。 ◆もともとは、四角だったホームベース では、「ホームベースはなぜ五角形か?」という質問に移ろう。 ベースボールの元祖といわれているボールゲームに、ゴールボール、タウンボール、ラウンダースなどと呼ばれているスポーツがある。それはイギリスで生まれたんだけど、大まかなルールは、ボールを投げてバットで打ち、いくつかの場所をまわって元の場所まで帰ってくると得点になるというもの。 ラウンダースでは、バッターボックスと4つの杭(くい)を五角形にグランドに並べる(のちに、それが正方形になったとされている)。ピッチャーの投げるボールを打つと、バッターは1本目の杭に向かって走り、 4つ全てにさわって帰ってきたら得点。走っている間に守備側がボールをキャッチして、そのボールをランナーに当てたらアウト、という野球に近いルールだった。 そんなボールゲームがアメリカに伝わり、大流行して、ベースボールとして今日まで続くルールが整えられた。それは19世紀中頃(1845年)のことで、アレキサンダー・ジョイ・カートライト2世というニューヨークの消防士をしていた人物だったといわれている。 その当時、ベースは木製だったり布袋だったりしたんだけど、現在のホームプレートをふくむ4つのベースのすべてが四角形だった。1876年に大リーグのナショナル・リーグが誕生したときも、「ホームベース」は四角い布袋のまま。それが、1887年に白色ゴム製の埋め込み式プレートとなり、1900年、アメリカンリーグが誕生したときに、四角形から五角形に変わったんだ。 なぜ、変えたかというと、ストライクゾーンの見極めをわかりやすくするためなんだ。 ストライクゾーンの左右は、ホームプレートの上の空間を、ボールの一部分でも通過すればストライクとされているよね。そのとき、ホームプレートが四角形なら、左右の判定を、四角形の頂点の上を通過したかどうか判定しなければならず、これは、かなり難しい作業だった。 そこで、四角形ホームプレートの投手よりの2カ所に小さな三角形を付け加え、ストライクかどうかの判定を、「点」ではなく「線」で行えるようにしたんだ。そのほうが、より正確にストライクを判断できるからなんだ。 ◆アメリカのルールを日本語に翻訳するときに生じた間違い ちなみに君たちは、いま英語を習っている途中だね。 余談になるけれど、明治時代、日本にベースボールがやってきたとき、当然のことながらルールを日本語に翻訳するという作業が生じたんだけれど、そのとき、いろんな間違いがあった。 たとえば、ストライクゾーン。ストライクゾーンは、現在では「肩とベルトを結ぶ線の真ん中より下から、トップオブザニー(TOP OF THE KNEE)までの間」とされているんだけれど、この“TOP OF THE KNEE”とは、膝の「いちばん突き出たところ」を意味する言葉だ。 けれど、日本人は「膝の上部」と訳してしまったので、逆にストライクゾーンを狭くしてしまったんだ。おまけに、この翻訳の間違いは、今も改められていない。 また、同じくストライクゾーンで先ほど紹介した「ボールの一部がストライクゾーンを通過する(PASS THROUGH)」とストライク、というルール。 日本の訳では、“PASS THROUGH”を「通過する」と訳している。でも、本当は、「通り抜ける・中を通る」という意味なんだ。 ライオンの火の輪くぐりでは、ライオンは“PASS THROUGH”したとなれば、完全に輪をくぐるという意味になるけども、「通過する」と訳してしまうと、「接するように通り過ぎる」という意味にもとれるよね。「電車がホームを通過した」という言葉は日本語としてはおかしくないけれど、それは「電車がホームの上を通過した」ことではない。 けれど、“PASS THROUGH”という言葉は、ボールの一部がホームプレートの上の空間を完全に横切らなければいけない、という意味なんだ。 こういう微妙なニュアンスの違いが、思わぬ誤解を生むこともある。それは野球だけに限ったことではないので、みんなもしっかりと英語を勉強しようね。 |
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